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売るしか主人を



柏宮家に長く仕える執事、柳川の息子が、バルダリウム(小さな温室)に居る主人に声を掛けた。柏宮家次男、基尋よりも二歳年少で基尋の側小姓を務めている。名を浅黄という。

「若さま。旦那さまがお呼びです。」

「ありがと、浅黄(あさぎ)。ねぇ、君は父上達と一緒に、秩父の田舎に引っ越すのではなかったの?」

浅黄と呼ばれた少年は、きゅっと唇を噛んで怒ったように年若い見つめた。温室で咲いた大形の白百合の花を抱えていた。

「……浅黄はどこにも行きません。父上と別れても、終生、若さまの元に居ります。」

「そう……?でももう、お父さまは、浅黄にお給金も出せなくなると思うの。金庫が空になってしまったら、柏宮家も他所と同じように屋敷をないかもしれないね。ぼくも浅黄や命婦(女中)の手を借りずに、自分の事は何でもできるようにならないといけないって思ってるんだよ。」

若さまと呼ばれた柏宮基尋はふふっと笑った。その横顔は、あくまでも清浄で凛として抱えた白百合のように美しかった。既に吹き荒れる嵐に諦めの色を浮かべているようだと、柳川浅黄は思う。
大好きな主人の身に、これからどれほどの災禍が襲い来るのかと想像して、思わず浅黄は身震いした。

「若さま。浅黄は何が有っても若さまのお傍に居ります。決してお傍を離れません。どこまでも、ずっとお連れ下さい。」

「ありがと、浅黄。ずっと一緒に居てね。このお花を、応接間の花瓶に活けておいてくれる?おたあさま(お母さま)がお好きだから。」

「……とうとう、進退窮まってしまったよ。先祖伝来の土地を全て物納することになりそうだ。金庫の中に在る金は、価値の無いただの紙くずになってしまった。」

「……そうですか。暎子お姉さまから頂いたお金を納めても、足りなかったのですか?」
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